金子大志さんインタビュー

読売巨人軍の野球振興部でお仕事をされている、金子大志(かねこ たいし)さんにお話を伺いました。1年目はジャイアンツアカデミーで野球スクールのコーチを務められ、現在は野球振興部の活動としてジャビットカップやジャイアンツジュニアに携わり、野球振興に貢献されています。



―――読売巨人軍の野球振興部でお仕事をされるようになったきっかけを教えてください。

金子 大学4年生の時にジャイアンツアカデミーで研修をさせていただいていたのですが、就職のタイミングで「ジャイアンツアカデミーで働かないか」と声をかけていただきました。もともとは教員になろうと考えていましたが、教員では日本の小中高校の野球人口減少という問題に対して、教員として指導したいと思っても効果的なアプローチをすることは難しいと思いました。元々、野球に関わりたいという気持ちはすごく強かったので、読売巨人軍のような大きな組織に所属して野球界に貢献したい思い、野球振興部でお仕事をさせていただくことにしました。

金子大志



―――野球振興部ではどのようなお仕事をされているのでしょうか?

金子 1年目は部署の事業の1つである、ジャイアンツアカデミーのコーチをしていました。普段のアカデミーでの指導のほかに地方での野球教室でも指導をし、子どもたちに野球の面白さを伝えてきました。2年目からは野球振興部全体の業務として、ジャビットカップの運営、ジャイアンツジュニアのマネージャー、小学校でのベースボール型授業の支援(小学校訪問)の業務を主に行なっています。ジャイアンツアカデミーの事業ではコーチとして、子供たちに野球の指導をすることが主なお仕事でしたが、今は部署全体のお仕事に変わることで、「野球振興部ってなんであるんだろう?」や「なんでこういうことをするんだろう?」という、コーチとしての野球指導とはまた違った視点で自分が関わる事業の意義をひとつ広い視野で捉えることができるようになりました。



―――小学校訪問やジャビットカップ、ジャイアンツジュニアについて教えてください。

金子 まず、1年を通して行う業務が小学校訪問です。訪問の日程と派遣するコーチのアレンジメントに加えて、道具の確認や帽子やリーフレットなどのプレゼントの発送も行います。 ジャビットカップは、東京と川崎を合わせた54の自治体の代表チームで行うチャンピオン大会です。大会は8月から9月にかけて行われます。代表チームの決定は各自治体で予選を行ってもらいますが、決勝戦のみ以前現役選手として活躍していたジャイアンツアカデミーのコーチがプレゼンターとして出向き、試合の講評や選手へ賞典の授与をします。ここでの業務は、大会を開催するにあたっての協力企業や連盟とのやり取りがメインの仕事となります。 ジャイアンツジュニアは、年末に行われるNPB主催の「NPB12球団ジュニアトーナメント」に出場する小学生の選抜チームです。12球団全てのチームが出場し、プロの選手と同じユニフォームを着て札幌ドームで試合をします。7月の終わりから8月にかけてセレクションを行い、チームの活動は10月から12月の毎週土日に行われます。私はチームのマネージャーとして、施設予約やセレクション、練習試合の日程を組むなどのマネジメント業務を行います。実際、マネジメント業務に留まらず試合の際にはスコアを書いたり、練習や試合中の選手の写真を撮ったりしてホームページにコラムを掲載することもします。

金子大志



―――お仕事をしていて感じている「面白さ」や「やりがい」について教えてください。

金子 教員は、そもそも部活指導がメインではありませんし、どうしても影響を与えられる範囲が限られると思うので、自分が携わる事業によってより多くの人に影響を与えることができるところに面白さを感じています。ジャビットカップは予選も含めると1000以上のチームが関わる大きな大会です。実際にプロが試合している球場で試合ができるなど、この大会を目標に野球をしている選手もいます。そのような大規模な大会を主催したり、現場に赴いて野球教室を実施したりすることで「野球って面白い」と感じてもらえることがやりがいです。そのような活動を通じて、その人の人生を豊かにすることに貢献できるという意味で私たちのような活動は必要だと考えていますまた、まだまだ自分から新たなアイデアを提案することはできていませんが、社内で発言をすればそれを聞き入れてくれる体制は十分にありますので、野球界の発展に向けて私はこの活動を今後も続けていきたいと考えています。続けていく中で今よりも力をつけ、より良い活動のために発言をしていきたいですね。



―――金子さんがお仕事される上で大切にしていることはなんでしょうか?

金子 私が仕事をしている野球振興部は、現場で子どもと接することが特徴の部署です。仕事を始めて上司から「自分たちの仕事は草の根活動だ」と言われました。自分たちがやっていることが成果につながっているか測ることはとても難しいですが、一年を通じて何十回、何百回とコツコツと野球教室を開き、何千人もの子どもたちに指導していく中で、いかに子どもたちに野球を楽しんでもらえるかどうかがとても大切だと思っています。 その意味でも、辛抱強さがないとこの仕事はできないと思っています。すぐに成果を求めて焦るのではなく「これをやってみたら面白いんじゃないか」、「これをもう少しアップグレードしてみたら何年後かに良くなるかもしれない」と結果が目で見てわかりづらいからこそ、長い目でこれらの活動を見ていくことが大切だと思っています。

金子大志



―――今のお仕事をされていている上での一番の経験や感動したことはなんですか?

金子 ジャイアンツジュニアの活動が最も印象に残っています。ジャイアンツジュニアは狭き門で16人という限られた人数しか選ばれません。やはり、「ジャイアンツジュニアで野球をしたい!」とチャレンジしてきた子どもたちは野球をとても前向きに、真剣に取り組んでくれます。活動期間中は、監督、コーチ、選手、保護者全員が同じ方向を向いて目標に向かって頑張っているので、活動の終盤になるにつれて、「いいチームになれている」と思う瞬間が沢山あり、そのチームの一員になれたという充実感を感じた時は、この仕事をしていてよかったな!と思いました。  一方で、小学校を訪問して行う野球指導は一期一会です。自分としても野球指導に手応えがあったという時は、子どもたちから「野球チームに入ろうと思った」、「先生の授業楽しかった」と直接言ってくれます。その時は子どもたちに本当に野球指導をできてよかったと思います。素直に嬉しかったです。そういう感動の積み重ねが小学校訪問では沢山ありました。指導する内容は決まっていますが、子どもたちにとって野球指導は初めてで新鮮な体験です。マンネリ化せず、常に工夫をしなければいけないと思うので常日頃心がけていきたいです。

金子大志



―――今後のスポーツ界、野球界に臨むことはありますか?

金子 子どもたちがその競技を続けていくことに重きをおいたアプローチを最優先するスポーツ界になったらいいなと思います。それができていないことが、多かれ少なかれ野球人口の減少にもつながっていると感じています。 日本の野球界はチャンピオンスポーツです。中学校や高校の3年間で結果を出すことにフォーカスすることで、怪我が多くなったり、バーンアウト(燃え尽き症候群)してしまったりする選手が多いのが現状なのではないでしょうか。そのような現場の課題解決には、子どもたちに野球の楽しさを感じさせてあげられる指導者や環境づくりが大切だと私は強く感じています。スポーツを続ける理由はそれぞれあっていいと思うのですが、やはりスポーツは勝つためだけにやるわけでもなく、誰かにやらされるわけでもなく、「自分が楽しいから続ける」という単純な気持ちがとても大切だと思います。短い時間で体を駆使して結果を出すのではなく、選手と指導者どちらもが長いスパンで見た目標を立てられるようになれたらいいですね。

金子大志



金子大志(かねこ・たいし)・・・1995年生まれ25歳。 
5歳から13年間高校まで選手として野球をし、東海大学に進学後はスポーツメンタルトレーニングを学び、中学校の野球チームをサポート。大学卒業後は、読売巨人軍野球振興部へ就職し、現在に至る。