土屋祐介さんインタビュー

Bリーグの熊本ヴォルターズのAT(アスレチックトレーナー)として活躍されている土屋祐介さんにお話を伺いました。「選手に身体面・健康面でより豊かな状況を提供することが仕事です」とお仕事に対する熱意を丁寧に語られる姿がとても印象的でした。



―――今のお仕事を目指したきっかけを教えてください。

土屋 漠然と「スポーツに関わる仕事がしたい」と思っていた時に、トレーナーという職業があることを知りました。その後、新聞で日本人女性がNFLのスーパーボウルに出場するチームでトレーナーをしているという記事を読み、その職業をはっきりと認知しました。それがトレーナーを目指したきっかけです。
 私は、高校まで野球をしていました。部活動ではすごく珍しいケースだと思いますが、キャッチボールの時間だけが設定され、ウォーミングアップは全て個人に任されていて、ウォーミングアップのメニューを自分で変えると自分の体の状態が変わるのが面白かった。そのような高校の部活動での経験やトレナーを志していたこともあり、大学も体育関係に進み、そこから今までの道筋が広がっています。



―――どのようなサイクルでお仕事をされているのでしょうか?

土屋 リーグのシーズンは9月末から翌年5月上旬までです。その後、成績によってプレーオフが1ヶ月ついてきます。チームの練習自体は契約の始まる7月中頃からスタートです。チーム練習開始の前に選手に提携している医療機関でチェックを受けてもらい、選手の身体の状態等を確認するところからスタートします。



―――1日のスケジュールを教えてください。

土屋 体育館に着いたら、まず物品の準備から始めます。選手がきたらテーピングと治療をして、練習が始まります。練習中は練習ができない選手の対応をします。練習後は、練習をしていた選手の治療を行います。それは試合をしている週末も、練習をしている平日も変わりません。

土屋祐介



―――今のお仕事をされている上での、やりがいを教えてください。

土屋 決まった十数名の選手の経過をシーズンを通して追っていけるというところにやりがいを感じます。どうしても臨床の現場(治療院など)ですと、患者さんにきていただかないと経過を追えず、患者さんからのフィードバックも得られません。スポーツの中でもバスケットは特に少数のチームですので、とても詳細に追うことができます。



―――お仕事をされる上で、大切にしていることを教えてください。

土屋 選手に身体面・健康面でより豊かな状況を提供することが仕事です。チームにトレーナーが私1人だとしても、提示できる選択肢を極力たくさん持てるように心掛けています。診察に同行し、医師の見解を聞いた上で、現場でプレーを見ていたスタッフとして、提示された選択肢について補足説明し、メリット・デメリットを一緒に考えながら、選手自身の選択を手伝います。
 日頃の治療でも、針での治療、手を使った治療、理学療法的なエクササイズなど様々なバリエーションがあります。治るための最善の可能性を探りながら、ひとつひとつの選択肢の一長一短を見せて、選手に納得してもらい、あくまでも選手が主体的に「治療を選んでいる」という感覚を持ってもらうことを大切にしています。

土屋祐介



―――トレーナーはチームの中でもたくさんの方とコミュニケーションを取る必要がありそうですね。

土屋 怪我の進捗状況を見ながら復帰時期や練習参加状況について、練習中の選手の動きを見ながら監督やコーチとも話をします。選手やコーチ陣の意向を聞きながら、選手の現状を双方に伝えながら業務を進めています。

土屋祐介



―――ATとして活動されてきた中での最高の経験や感動を教えてください。

土屋 選手の怪我が治っていく過程や本人の苦悩を見ているので、怪我の大小や復帰までにかかった日数にかかわらず、選手が復帰した瞬間は毎回感動します。特に印象に残っているのは、ある選手がシーズン開幕前に前十字靭帯(ACL)を断裂してしまったのですが、同一シーズン中に復帰した時です。ACLの断裂で同一シーズン中に復帰するのも私にとっては初めての経験でしたし、約6ヶ月半という復帰のスピードも本人の努力の賜物です。その選手が復帰したときは一番心が動きましたね。



―――ATとして、他の競技で活動してみたいと思ったことなどないのでしょうか?

土屋 スポーツに関わる上で興味があったのが身体にアプローチすることだったのでATを選びました。学生時代に所属していた医科学研究所のスポーツサポート研究会の先生に男子バスケットボール部を勧めていただき、そこでトレーナーとしての活動を始めました。バスケットボール部で得た経験によってプロチームからお声かけいただきました。それが十数年続いている。仕事をしていて楽しいですし、お世話になったバスケットボール界にその経験を還元したいと思っています。

土屋祐介



―――実際に現場でお仕事をされていて、ATやトレーナーという職業の現状はどのように認識されていますか?

土屋 なんとなくなる人がすごく少ない。大学を卒業して就職活動をして、受かった中から選ぶといった形態ではありません。トレーナーを目指して大学に4年間通って、その後さらに3年間国家資格のために専門学校に行く人がほとんどです。能動的な方が多いと思います。



―――土屋さんのように、ATとしてプロスポーツチームで働くことを目指している人に何か伝えるならば?

土屋 人を探しているチームは日本中にあります。たくさんの情報に触れ、多くの人と関わり続けていれば、手を差し伸べてくれる人は必ずどこかにいます。 般的な就職活動と異なる点が多くて、学生として目指すうちは要領がつかめず難しく感じるかもしれませんがトレーナーを目指すことは無駄ではないし、目指すことに価値があるということを伝えたいです。

土屋祐介



―――これからのトレーナー業界やスポーツ界に期待したいこはありますか?

土屋 トレーナー業界、スポーツ界をより良くするためには、たくさんの人が関わることが必要だと思います。チーム間、リーグ間、競技間などの横断的なつながりを高めなければいけないと思っています。Bリーグが開始された年から、全国36チームのトレーナーが集まる会議を開くようになりました。そこで様々な指針や申し合わせ、フローが作られることで選手の安全が担保されるようになりました。他のトレーナーの団体とコンタクトをとり、お互いにないものをシェアすることで改善できればより良い環境の構築が進むと思います。



土屋祐介(つちや ゆうすけ)・・・1987年生まれ 熊本ヴォルターズ、アスレティックトレーナー。
東海大学、日本鍼灸理療専門学校卒業。大塚商会アルファーズ(2011年〜2014年)、アースフレンズ東京Z(2014年〜2018年)を経て現職