行成 沙織さんインタビュー

高校時代にスポーツ選手を支える仕事があると知り、決めていた進路を変更。「ちょっとぶっ飛んでいたんでしょうね」と自身を振り返り笑う、行成沙織さん。トレーナーを真っ直ぐ目指した思い切りや、揺るがない信念は女性から見てもかっこよく、憧れるに違いありません。今を輝く女性指導者の行成さんに迫ります。



―――この道に進むまでの選択や、今の仕事に繋がっていったきっかけを教えてください。

行成 きっかけは、高校の頃に剣道でアキレス腱を切ってしまったことです。当時は知識もなくトレーニングを始める前にウォーミングアップやクールダウンをしませんでした。それも原因の一つだったと思いますが、前兆が色々出ていたにも関わらず休むこともしないまま怪我をし、半年以上剣道が出来なくなってしましました。その間、病院で理学療法士の方にお世話になり、スポーツ選手を支える仕事があることを知りました。そこから整形外科のドクターやスポーツに関わる仕事など、色々調べました。高校3年生の夏、元々全く違う進路を考えていましたが、先生に将来スポーツ選手を支える仕事をしたいと相談すると、東海大学の体育学部にそういった勉強ができるところがあるとアドバイスを頂きました。付属の高等学校だったこともあり、東海大学を選んだという感じです。大学でトレーナーを目指すにしても、トレーニング方法だけ知っていても裏付けができないと考え、体の構造やトレーナーとして役立てることを学ぶために1年生の時からトレーニング部門で学んでいました。あとは、純粋に興味があったというところでバイオメカニクスを専攻しました。



―――大学時代は女子柔道部をサポートしていたとのことですが、当時のことを教えて下さい。

行成 女子柔道部でのサポートは私の中ではすごく大きく、濃い経験です。同年代でも世界を目指している選手が沢山いる中で、高校の剣道では経験できなかった世界を知り、刺激をもらえました。既に学生トレーナーとして活動している先輩もいらっしゃり、全てにおいて今までの自分は甘かったなと思い知らされる期間でもありました。私にとってターニングポイントであり、この経験が無ければ今の仕事は出来ていないと思います。
卒業後も大学スポーツに関わる仕事に就きたいと考え探していた時に、青山学院大学のフィットネスセンターに出会いました。ちょうど青山キャンパスに設立される年です。すでに所属されていた人達たちの中には、アスレチックトレーナーやストレングスコーチの方、現場で活躍されていた方が何人もいらして凄く面白いなと思い、就職しました。



―――青山学院大学フィットネスセンターではどんな業務形態で働いていらっしゃいますか?また、どのような活動をされているのかを教えてください。

行成 日中は一般の学生や教職員の方が施設に来るので、主にトレーニングのサポートをしています。同時に、女子バレーボール部のサポートもしているので、バレーボール部の練習時間や合宿・試合があればそちらに帯同させてもらっています。
新型コロナウイルスの影響について、大学ではオンライン授業の形をとっているので、(2020年8月中旬時点) 学校へ通う学生はまだ少ないですが、フィットネスセンターを利用しにくる方のサポートをしています。青山学院大学フィットネスセンターもこのコロナ禍で、Zoomを使ってのトレーニング指導や、YouTubeにトレーニング動画の投稿を始めました。オンラインで学生の皆さんにフィットネスセンターを体験して頂くという取り組みで、結果はかなり好評でした。
しばらくバレーボール部も練習ができなかったので、全員でZoomを繋いで一緒にトレーニングをしていました。会えなかった分、画面を繋いだだけでもお互いの姿が見えるというのは選手達にとってモチベーションになります。試合が無くなり、気分が落ち込む中で、「頑張ろうという気持ちになれた」と、選手達からも好評で、たくさんのコメントをくれました。私達としては動画投稿など、慣れないことをやっているので難しい部分はありますが、学生にとっては普段一緒に練習ができるという環境の有難みを知るきっかけになれたと思いますし、画面を繋ぐだけでもトレーニングの質は変わるとプラスに捉えています。

行成沙織



―――一般の学生指導、女子バレーボール部指導の二側面でどんなことにやりがいを感じますか?また、大切にしていることは何でしょうか?

行成 やりがいしかないですね(笑) バレーボール部のサポートで言えば、日ごろ練習で努力をしているのを知っているのでその成果がでるのは嬉しいですし、選手が怪我や挫折などを乗り越えて練習や試合で活躍する姿を見られるのはすごくやりがいに思います。一般の学生指導でも同じです。フィットネスセンターに通われている方々は目標があって来ていることが多いので、そういった方達が目標を達成されるのも嬉しく、やりがいに感じます。例えばダイエットであれば「何キロ落ちました」など、結果を聞くのも嬉しいです。スポーツや運動による成功や感動を一緒に味わえ、悔しさや挫折を一緒に乗り越えていけるのはこの仕事ならではの醍醐味で、ありがたいことだなと思っています。
選手を指導する上で気をつけていることは、コミュニケーションやサポートの面で一方通行にならないことです。大学4年間という限りある時間の中で、選手は「この試合で勝ちたい!」など、目標は自分達で決めています。そのため、こちらが一方的に「これをやりましょう、あれをやりましょう」という指導はなるべくしないように自主性を尊重しています。選手個人に対してや、チームとしてコミュニケーションをとり、双方の意見を擦り合わせています。トレーニング指導をする時も、ただ「これをやりますよ」という説明だけではなく、なぜこのトレーニングをやるのか、どこを目指せるかという意図やポイントを話して、理解をしてもらうことを心がけています。暗記だとその場のトレーニングは出来るかもしれませんが、そこで完結してしまうと思います。選手が本当に意図を理解してくれたら、応用が出来て様々な場面で活かすことができると思います。選手がわからないとなれば、理解してもらえるまで話をして双方の目的や意図が合致した状態でトレーニング出来るように心がけています。 トレーニング内容は個々で違います。同じ時期のプログラムでも選手によって少しずつ内容が違います。なぜかというと、選手それぞれ体の形やポジションが違うからです。弱点や長所もみんなそれぞれ違うので、個々で話して開示するようにしています。

行成沙織



―――日本トレーニング指導協会 JATI-ATIの資格をお持ちですが、行成さんのようにトレーナーして活躍されている方はいらっしゃいますか?またスポーツ界では、トレーナーとしての位置付けはどのようになっていると考えますか?

行成 バレーボール業界では、スポーツ科学のようなサポートをしているかどうかはチームによると思います。リーグ戦などで他の大学を見ても、トレーナーがいないチームはあります。そういった意味で、現場の監督やコーチが私たちのようなサポートの役割を担っているところが多いのかなと思います。一括りでトレーナーと言っても、色々な分野の方が関わっているチームもあるので、様々です。 “トレーナーとして活躍している人”ところでいうと、私と同じように大学のチームやプロチームでトレーナーとして活動している方や産後や産前のママさんのアスリートトレーニング指導で活躍されている方もいます。大学の同級生や先輩・後輩など、私の周りで活躍している人は多くいらっしゃいます。



―――トレーナー業界やスポーツ界にこれから期待することや、こうなったらいいなと思うことがあれば教えてください。

行成 私個人的な意見としては、選手をもっと大事にしたいなと思います。普段大学生など若い世代に関わる中で感じるのは、資本である身体を大事に出来ていない選手が多いと思います。学生は年頃的にも成長期で身体作りがとても重要です。身体の大切さを伝えられる人がいれば、と思いますね。もしも怪我をしてしまった場合は、ただ我慢させるのではなく適切な処置や対応をして、良い状態でコートに立たせてあげたいと思っています。能力が一際高いプロの方達にサポートするトレーナーがいるように、ジュニア世代や学生などもっと若い世代(発展途上の世代)へのサポート体制も整ってくれば、選手たちにもっと伸び代ができると考えます。もちろん、選手を支えることが私の仕事でもありますが、それでも「もっと」という気持ちがありますね。



―――女性のトレーニングコーチは少ないイメージがありますがいかがでしょうか?

行成 現状的には少ないと思います。女性チームでも男性がトレーナーをしているところは多いですが、女性トレーナーはまだ少ないですね。私と選手が女性同士であることにデメリットを感じたことはありません。メリットとしては、月経など女性特有の悩みを理解できますし、選手としても相談しやすいと思います。監督も女性なので、情報を伝える時も情報を共有しすいです。テーピングを巻く時も身体に触れるので女性同士の方が良いですし、そういった部分は強みかなと思います。



―――感動した経験や、エピソードを教えてください。

行成 選手が目標達成をした瞬間を見るのは最高です。
2017年度のことですが、あるバレー選手が膝の手術を受けました。彼女は夏に復帰してからも頑張ってトレーニングを続け、その年の冬に全日本インカレでMVPを取りました。タフな試合が多かったにも関わらず、体力負けもせず最後まで足を動かし続けられた姿を見たときは嬉しかったですね。もちろん他の選手も、それぞれたくさんの悔しい思いをして努力を重ねた最後の大会でしたので、決勝のコートでいきいきと試合をする姿が見られたときは最高でした。
もちろんその他にも最高だった経験はいっぱいあります(笑) 普通に体験できることではないので、そういった意味では本当に選手や環境にすごく恵まれているなと思います。過去のサポートさせてもらったチームも今のバレーボール部の環境もそうですし、チームに恵まれて凄く感謝しています。

行成沙織



―――トレーニングコーチなどを目指している人に対して何か伝えたいことや教えたい事はありますか?

行成 トレーニングコーチを目指していたけど目指すのを辞めた、実際トレーニングコーチになってみたけど思ってた仕事とは違ったという方が見えます。このサイト『Back athlete』っていうタイトルですが、アスリートありきの仕事だと思うので、アスリートなど対象の方をサポートすることにやりがいや何か光るものを見いだせるかというところがすごく大事だと思います。やりたいと思えるなら本気でぶつかっていけば、仕事はあると私は思っています。本気で目指せるかどうか、そこ次第です。もちろん大変な事や悩むこともたくさんあります。しかし、それはどの仕事でも同じことだと思いますし、そういう悩みがあることはありがたいことです。私自身はやはり、凄くありがたい環境を頂いているなと思っています。



行成 沙織(ユキナリ サオリ)・・・
青山学院大学フィットネスセンタースタッフ
青山学院大学女子バレーボール部トレーニングコーチ