インタビュー

Bリーグ川崎ブレイブサンダースを愛するエキップメントマネージャー~伊敷仁美さん~

用具の管理・整備を専門にした「エキップメントマネージャー」。NBAとサッカー界では「ホペイロ」として既に活躍されている方がいらっしゃいますが、バスケットボールBリーグでは伊敷仁美さんただ一人。華やかにみえる役職ですが、お話を伺うとかなりハードなスケジュールをこなされていることがわかります。川崎ブレイブサンダースを支える伊敷さんにフォーカスし、これまでの経緯とエキップメントマネージャーという職業に迫ります!

Bリーグでエキップメントマネージャーとして仕事をすることになった経緯と業務内容

写真提供:川崎ブレイブサンダース

―――この職業に、どういった経緯で就かれたのか教えてください。

伊敷 正直なところ、この仕事がしたいと就いた訳ではなく、縁あってこちらに入ったという形です。バスケットボールについて、私は小学生の頃から大学生までずっとプレーヤーとして成長してきました。小学校から高校まではメインで試合に出たり、中学・高校では県選抜ジュニアオールスターや国体選手に選ばれたり、県内で多少は名前が出るぐらい努力をしていました。山梨学院大学は当時大学リーグ2部で、全国の高校から様々な選手が集まってきたので思うように試合に出られず、自分のプレーができませんでした。

それでもバスケットボールが大好きな気持ちは変わらず、バスケットボールに関わる仕事をしていきたいと決め、梅嵜さん(当時、山梨学院大学女子バスケットボール部監督:梅嵜 英毅さん)に相談しました。そこで川崎ブレイブサンダースのフロントスタッフを紹介してもらい、働くことになりました。

お話をもらったのが2017年7月の後半ぐらいで、そこから順調に話が決まり、川崎ブレイブサンダースに合流しました。大学4年生の在学中だったので週1で山梨へ授業を受けに通っていたものの、バスケットボール部は引退し、家も神奈川に引っ越しました。

―――お仕事の業務形態を教えてください。

伊敷 普段の練習の時は7時半くらいにクラブハウスに来て、着替えてから、前日に洗った洗濯物をたたみ、各部屋の前に練習着を置きます。その後、体育館へ行き練習の準備をしてから、スタッフミーティング、10時から練習が始まるという形です。練習が終わった後にお昼ご飯を食べて洗濯を始めます。

普段1日2回練習で使ったウェアを洗濯しています。午後は自主練が終わった後にまず洗濯物を回収して、2回目の洗濯をまわし、干してからから帰るという感じです。そのため、普段はずっと洗濯に追われている感じです(笑)一番大変だなと思うのは遠征の時です。

移動日の前日に宅配業者のトラックに来てもらい、チームの荷物と個人の荷物(キャリーケース)を全部頼んでホテルへ運んでもらいます。そのため、荷物の準備に加えて、いつもの洗濯物、そしてユニフォームをたたむ。それも時間が限られている中で同時に3つの仕事をしなければいけなくなるので、そういう日は本当に忙しく、何かやることを忘れてしまうくらい大変です。

Bリーグのエキップマネージャーとしての想いとやりがい

写真提供:川崎ブレイブサンダース

―――お仕事に就かれて3年目になられるとのことですが、やりがいはどこにあるのか、良かったことや最高だった経験も教えてください。

伊敷 元々、川崎ブレイブサンダースが好きなチームのひとつだったので、まず一員としてお仕事ができているということはすごく私のモチベーションに繋がっています。そして、これは自分だからこそできている仕事だと思っています。「やりがいがどこにあるのか」という点では、あまり評価されにくい仕事なので、考えると難しいですね…。

川崎ブレイブサンダース広報担当 やりがいや評価に関しては本人が答えるのは難しいと思います。ただ、伊敷エキップメントマネージャーがいないとまわらない部分は、当たり前のようになってしまっているので、日常的に「評価されている」と感じづらいのでは思います。ハイエースを1人で運転して荷物を運ぶなど、日常では大変なことが多いと思いますが、それでもしっかりやっているというのは本当にすごいことで、選手、コーチ、フロントスタッフも全員がとても感謝していますよ。

伊敷 私がこのB リーグの仕事に就きたいと思ったのもバスケットボールが好きだということが強いです。プレーヤーとしてやっている時に男子のプレーを見たり、DVDを買って勉強したりしていました。そんな中で憧れていた選手達と今こうやって仕事ができているということが一番この仕事をしていて良かったなと思います。

もう1つは、毎日肉体労働をしているので大変だと思いながらも、天皇杯でチームが優勝できた時は本当にすごく嬉しかったです。私自身も今までバスケットボールをしてきて優勝が初めてだったので、「もうそんなことどうでもいいや」と仕事の辛さが吹き飛んだくらいに嬉しかったです。この仕事をやっていて良かったなと思いました。

試合や仕事などのメリハリ、適度な距離感を保つというのは大事にしていますが、川崎ブレイブサンダースは選手もスタッフもすごく仲のいいチームです。本当にみんながいい人で、家族みたいに接してくれます。年が近いお兄ちゃんやお父さんみたいな感じで、良い環境で働けています。

―――自分で大切にしていることや、一方で注意深く気をつけていることその辺を教えていただけたらと思います。

写真提供:川崎ブレイブサンダース

伊敷 試合で使うものを管理しているので、忘れ物や何かが足りないというのは絶対ダメなことなので、リストに書いてミスがないように気をつけています。

川崎ブレイブサンダースは本当にリーグ一番くらいの荷物の多いチームだと思いますが、それでも1つも荷物は忘れられないので、とにかく細かく確認というのは大切にしています。他に気を付けている点は、洗濯も確かに大変ですが、それを適当にたたむのではなく、選手が普段使うものなので大切にしっかり綺麗にたたむようにしています。

―――エキップメントマネージャーというと役職はB リーグでも第一人者で、モデルケースみたいなものがないと思いますが、その辺はどのようにお仕事を習得されたのか、どういったところを参考にしているのかをぜひ教えていただければと思います。

伊敷 クラブのフロントサイドに、チームマネジメント部というフロントとチームをつなぐ部署があり、そこからこの仕事をもらいました。最初に、サッカーの「ホペイロ」や、NBAにはエキップメントマネージャーがいるので、その動画などを見せてもらい「こういう仕事をしてほしい」というイメージを見せてもらって、一緒に手探りではじめました。

また、エキップメントマネージャーの勉強のため、去年FC東京さん(Jリーグ1部)に行って、ホぺイロの山川さんに直接話をお聞きました。実際に洗濯機が置いてあるランドリーだったり、荷物を管理している部屋だったり、そういったものを直接見せてもらうことができました。本当にひとつひとつ綺麗に備品が置かれていましたし、洗濯スペースがすごく広くて。まだまだ変えていけなければいけないところは多いなと思いました。

今はまだチームマネジメント部のスタッフと話し合っている最中ですが、クラブハウスの洗濯スペースをもっと広くするだとか、直接見に行って参考にしたことや習得したことを実践できるように考えています。

―――エキップメントマネージャーは、他のクラブにも増えていくべきだと思いますか?

写真提供:川崎ブレイブサンダース

伊敷 もっと広まっていいお仕事だとは思いますね。私は、試合会場へはチームが入ってくる2時間前ぐらいには着いて荷物の準備をしています。その時間帯に他のチームのマネージャーさんやトレーナーさんも先に入って準備をしていますが、やはりこれを専門としてお仕事をしている方はまだいらっしゃらないです。

エキップメントマネージャーがいなくてもトレーナーやマネージャーで確かに成り立っていますが、メインでやる人がいるからこそ、準備する物にもっとお金をかけられますし、チーム全体としての視野が広がっていくと思うのでこの仕事はもっと広まっていいと思います。また、この仕事は評価がされにくい仕事なので、エキップメントマネージャーがどんな仕事をしているのか、伝わるのか発信するのは難しいところではあります。

川崎ブレイブサンダース広報担当 以前にクラブで伊敷エキップメントマネージャーの記事を書いて、クラブwebサイトにアップしたことがあります。そうしたら、「こういう人が働いているんだ」、「こういう人がいるからチームが良くなるんだ」など、すごく反響を頂きました。

華やかに見える世界なので「私もやってみたい」というお問い合わせもありましたが、例えば1週間体験ツアーを行うなどしてみても良いかもしれませんが、伊敷エキップメントマネージャーと同じ仕事を体験して、現実をみたら3日目くらいで来なくなると思います(笑)そのくらいハードな仕事で、誰もができることではないですね。

伊敷 私は学生時代をプレーヤーで過ごしてきたので、精神力的なところがここで活かされています。荷物が多く重いですし、体を動かす仕事でもあります。性別は関係なく、今後は男性も求められる仕事だと思います。

―――伊敷さんのエネルギッシュなお話は、この仕事を目指したいという方々をすごく勇気付ける言葉になると思います。ぜひ、これは大事にしたいとか、今のうちにしておいた方がいいことがありましたら教えてください。

写真提供:川崎ブレイブサンダース

伊敷 私は本当に運が良かったと思っているので、そんなに影響を与えられるような人ではないと思います(笑)目指す方に伝えるなら、やっぱり“好きなことに関してはそれを貫き通すということが大事”ということです。そして誰にも負けないくらい、「これが好き!」というのを自分からアピールすることです。

私の場合、バスケットボールが好きという気持ちでやってきて、梅嵜さんにお願いして仕事のチャンスをもらいました。その反面、自分でも動かないといけないと思い、色んなチームに『フロントスタッフなどの募集をしていないですか?』というメールを送り、自分から行動はしていました。それもあり、今川崎ブレイブサンダースに入ることができたのではないかなと思います。好きなことは自分から何か仕掛けていくこと。まずは自分自身と向き合い、将来に向けてどうしていきたいかを考えるといいと思います。

――伊敷さんが奮闘している仕事が数年後、Bリーグの「エキップメントマネージャーとしての仕事」に正式になっていくのではないかと思います。責任重大なポジションにいらっしゃるかもしれないですね。

伊敷 そうですね。正直、私も将来こうしていきたいということがまだ見つかっていないので、まずはそれをもっと明確化させていきたいと思っています。

Bリーグがもっと有名になるにはこういった裏方の仕事が今後大事になっていくと思うので、どうしたらもっと選手がプレーに集中できる環境を作っていけるか、自分なりに研究して考えていくことが大事だと思っています。まずは、こうしてエキップメントマネージャーとして働く時間を大切にしていきたいです。

 

 

<プロフィール>

写真提供:川崎ブレイブサンダース

伊敷仁美(いしき・ひとみ)
1996年生まれ、沖縄県出身
小学3年生からバスケを始める
2017年9月 山梨学院大学4年次在学中に川崎ブレイブサンダースに加入
故郷の沖縄をこよなく愛し、「はいさいFESTA(ラ チッタデッラで開催される沖縄フェスティバル)」にもしっかり参加
幼少期のヒーローは琉球ゴールデンキングスの並里成選手。愛称は「イッシー」

「人」と「人」との繋がりを大切に~光本恵子さん~

長い目で野球振興を草の根で続けていくこと~金子大志さん~

バスケットボールのビデオコーディネーターとして働く~今野駿さん~

バスケットボールを続けコートに立ち続ける~井手口孝さん~

-インタビュー

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