インタビュー

バスケットボールのビデオコーディネーターとして働く~今野駿さん~

 バスケットボールのビデオコーディネーター(アナリスト)として第一線で活躍されている今野駿さんにお話を伺いました。映像を分析し数字でチームの勝利に貢献するため、常にコーチや選手の求める先を求め「キリがない」作業に徹するお仕事です。バスケットボールのさらなる盛り上がりに力添えがしたいと語ってくださいました。

JBAビデオコーディネーターの仕事内容

―――お仕事の内容を教えてください。

 女子日本代表チームでの活動をメインに、合宿や遠征に帯同をします。JBAの育成関係の取り組みにもプラスできるような映像作成や撮影を行なっています。映像関係を中心に、データや会議の資料をまとめる仕事を行います。

基本的には土日休みですが、合宿や大会前は詰めて仕事をしなければならないこともありますので、少し忙しい時には土曜日にも仕事をします。基本的にはナショナルトレーニングセンター(NTC)に出勤していることが多いですね。

―――映像の分析結果をチームに提示するのはもちろんですが、選手個人個人にフィードバックするケースもあるのでしょうか?

 ゼロではありませんが、自分から発信するということはほとんどありません。自分の中で準備はしておいて、選手から「ここはどうなっていますか?」と聞かれたら見せるということがあります。コーチや選手が求めているものに対して準備をし、提供をすることが基本です。自分から発信することはほぼないです。

―――準備が全てという感じですね。作ったとしても使わない映像にもなりうりますか?

 そうですね。もちろん使わないこともありますが、準備が全てです。「こういうことを求められるのではないか」という憶測で作業を進めていきます。「欲しい!」と言われたものをすぐ出せるように準備をしておかなければいけないので、言われたことだけをやっていると後手を踏んでしまうので常に前もって準備しています

JBAビデオコーディネーターになったきっかけと想い

―――今のJBAのポジションでお仕事をされるきっかけを教えていただけますか?

 僕自身大学までバスケをやっており、指導者・コーチになりたいという気持ちがありました。4年生の時に教員採用試験を受けたのですが結果は不合格で、地元に帰り非常勤講師としてバスケに携わっていけたらなと思っていました。その時に、東海大学と東京医療保健大学でトレーナーを掛け持ちされている方から、東京医療保健大学のアシスタントコーチのお話をいただきました。そこではとても興味深い緻密なバスケをされており、「ここで勉強をしたい」と思い拾っていただきました。その東京医療保健大学の監督さんが、今の仕事のパイオニアの方で、そこで押していただき、この分析の業界に入りました。

―――JBAのビデオコーディネーターまたはアナリストとしてお仕事をされて4年目とお伺いしました。その中でのやりがいを教えてください。

 やはりいちばんはチームが試合に勝てたときです。その時にスタッフや選手の方々に「ありがとう!」と言われたときは、やりがいというか、「良かったなー!」と感じますね。

―――実際のお仕事としては撮影しパソコンと向き合うという、まさに裏方という言葉がぴったりですが、そう言ったお仕事ならではのやりがいはありますか?

 基本的に、試合の時などはホテルにこもって映像の分析をします。そうなると実際に選手やコーチ陣とミーティング以外で会う時間は本当に少ないです。基本的には1人で別行動ですね。その中でのやりがいは、どれだけ自分を奮い立たせられるかということだと思います。日本代表という、日の丸を背負った立場に誇りと自覚を持って、日本のため、選手・コーチのためにと自分を奮い立たせるというのは、やりがいかなと思います。

―――ビデオコーディネーターというお仕事が、専門の職業としてどの程度成り立っているのでしょうか。JBAに限らず、Bリーグや大学での現状等も教えていただけたらと思います。

 世界的に見ると必要な人材、ポジションになってきているなと思います。世界ランキングが高いチームはビデオコーディネーターも1人ではなく2、3人います。アメリカは5人以上いたりもします。Bリーグも各チームに1人と増えてきていますね。大学はやはり、分析ソフトを購入したりと費用がかかってくるものですので、その予算が取れれば学生コーチで役割分担をして分析班を作るなどしているかもしれません。スポーツにおいて数字やデータを扱う人材は必要になってきていますね。確立したとは言えませんが、認知度は上がってきたのかなと思います。

―――近年は「アナリスト」という言葉がバレーボールやハンドボールなど他の競技でも増えてきました。そう言ったお仕事の重要性をどのような時に感じますか?

 数字やデータが全てというわけではないのですが、自分たちが見たものだけで判断するのではなく、実際に見たものに数字や映像で肉付けし、どうしてそうなったのかと根拠を深めていけるのかなという時に重要性を感じます。そのためにも正確な数字や映像を提供できるようにと意識しています。

―――アナログな側面をデジタル化し、そのギャップを提示していくということですね。

今野 あくまで数字という前提はありますが、選手やコーチに映像を求められた際に「数字はこうだけど実際はこう」とギャップを、自分が選手だったという経験も生かしつつ伝える。映像では「ここにパスが出せる」、「シュート打てるのではないか?」と思っても、選手の間合いとか見た感じで打てないなどということもあります。選手やコーチの意見も聞きながらデータを示していきたいですね。そこには自分の学びというか、「選手にはそういう風に見えているんだ」などと言った時、そこにデータがあるといいのかなと思いますね。データがあると「ミスにつながったところ」、「やっぱりこうだった」と映像を通して振り返りもできます。

―――お仕事をされる上で大切にしていることはありますか?

 一番は細かいミスをしないようにと気をつけています。試合期だといつも以上に張り詰めた空気になりますので、特に気をつけていますね。また、技術云々ではなく、人として誠実さが欠けてしまってはダメかなというのはあります。そこはやり遂げなければいけない、責任を持ってやります。勝ちに少しでも繋がるように努めています。それが私の仕事なので、プロとしての意識と誠実さを持って仕事をするというのは心掛けています。

ビデオコーディネーターとして仕事で印象的だったこと

―――ビデオコーディネーターとしてのご経験の中でいちばん感動したエピソードなどありましたら教えてください。

 1年目のアジア選手権大会での優勝が一番感動した経験です。国際大会に帯同するのも初めてでしたし、日の丸を背負ってスタッフとして帯同すること、何もかもが初めてでした。「できることだけは絶対にやり遂げよう」と、ホテルで作業することが基本でしたが、決勝まで行ってその舞台を見ることができました。その年からオーストラリアとニュージーランドのオセアニア圏のチームも出場していました。オーストラリアは世界ランキング2位です。その中で優勝したのもそうですが、チームでのアクシデントがありつつも一致団結し、チームで優勝を勝ち取った。そのときはすごく感動しましたし、嬉しかったです。

―――その他にも印象に残っている出来事などあれば教えてください。

 昨年、2019年のアジア選手権大会でも優勝しました。4連覇というプレッシャーの中で優勝できたというのは、インパクトがありましたね。私自身も2回目のアジア選手権で、前回以上に分析の準備だったりしなければいけないと感じました。オーストラリアのメンバーもオリンピックに出るメンバーがほとんどでしたし、そこでの優勝は感動しました。あとはやはり、尊敬する選手たちの立ち振る舞いや、試合への取り組み、練習前と練習後の取り組みは、見ていてやはりプロだなと感じます。そのチームの一員として「これぐらいでいいだろう」ということは絶対にやってはいけないなと思います。「これでもか、これでもか」と常に「足りない」と思い仕事をする気持ちにもつながります。

―――試合が続くときは、作業も時間との戦いになりそうですね。

今野 トーナメントなど、一発勝負で次の日が重要になってきますね。今までの中でいちばん大変だったのは、2年前のワールドカップです。スペインでの開催だったのですが、1試合目からスペインとの対戦でした。夜8時からの試合で、試合が終わり選手たちがホテルに戻ってきて色々していると夜の11時になったりして。準備する時間が本当に少なかったです。次の日は時間が早まり夕方の5時から試合でした。選手に映像を提供したり、自分たちの試合や対戦相手のデータを伝えたりする。その上でまた次の対戦相手の分析をとなると本当に時間がありませんでした。コーチ陣は次の相手の映像や特徴、データを見てから次の試合に臨みます。色々試行錯誤をしてデータをコーチ陣に渡していました。海外ということもあり、ネット環境も安定しませんでした。

―――スポーツ界やバスケット界におけるアナリストの環境がもっとこうなったらいいななど、期待したいことはありますか?

 バスケット以外でアナリストは増えてきているなと感じています。ラグビーを筆頭に、アナリストの講演会などもあり様々なポジションで活躍されている方のお話を聞く機会があります。それに比べるとバスケットはまだまだなのかなというのが率直な感想です。大学の同期にも素晴らしいアナリストがいます。彼らも今は裏方として仕事をしていると思いますが、ゆくゆくはベンチに座り監督の隣で分析をしたり、コーチ兼アナリストとなってくれたら理想なのかなと思います。
 ただそれも、アナリスト1人では作業や分析が追いつきません。分析のトップが1人、今私がいる立ち位置に1人と役割を分担してやりとりできたらいいのかなと思います。そうすることで、ベンチと観客席に別れリアルタイムで現場にフィードバックができる。そう言ったこともできればいいなと。ただバスケットは切り替えの早いスポーツです。40分という時間の中でなかなか難しい部分もあります。

 スポーツ界で言いますと、バスケもBリーグができて人気が出てきたように思います。日本全体も盛り上がってきているのは確かです。それでも「まだまだ」とJBAやBリーグの中で目標を持って取り組んでいると思いますので、自分もバスケットボールをやっている一員として応援したいし協力したい。力添えができればなと思っています。

<プロフィール>

1994年1月26日生まれ。小学校2年生からバスケットボールを始め、

山形南高校、東海大学に進学し大学4年生までプレーヤーとして活動。

卒業後は東京医療保健大学でアシスタントコーチを1年間務め、翌年からは日本バスケットボール協会に所属し、女子日本代表のアナリストとして仕事をしている。

-インタビュー

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