「脂質」とは?栄養素としての重要性について解説します!

皆さんは、「脂質」に対してどんなイメージを持っていますか?
普段食事を摂るうえで、三大栄養素のうち、糖質やタンパク質に重きをおいて食事メニューを考える場合が多いかと思いますので、本コラムでは、脂質に焦点を当てて脂質の重要性を解説していきます。

脂質がおいしいと感じる理由

ラーメンのスープやハンバーグの肉汁、バターがたっぷり乗った食パンなどを食べて、美味しい・また食べたい、と思った経験は誰しもがあるのではないでしょうか。これらのおいしさには、「脂質」が関係しています。ヒトが感じる味覚は、五味である「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」「うま味」の他に脂質を美味しいと感じ、もっと食べたいと感じる機能が備わっているため、上記のように感じる人が多いと考えられています(1)。
また、脂質は1 gあたり9 kcalであり、糖質や脂質と比較して1 gあたりのエネルギー量が多いため、同じ重量の食事を摂取した場合には、エネルギー摂取量が増加し、肥満に繋がりやすくなります。
こういったことから、「脂質」は太るというイメージや、パフォーマンスを悪化させるとみなされてきているため、食事に気を使っているアスリートは特に、脂質を制限しなければならない、と考えている選手が多いのではないでしょうか。

脂質を摂取するメリット

しかし、「脂質」は三大栄養素の一つであり、身体づくりのためにも必要な栄養素であるため、極端に摂取量を減らすと、かえってエネルギー不足や免疫機能の低下、細胞膜の弱化を引き起こし、パフォーマンスの向上を妨げてしまう原因にもなります。
また、脂質は上手に活用することで、パフォーマンスに対してプラスに働くといわれています。
例えば、運動後に糖質やタンパク質を摂取して利用された筋グリコーゲンを回復させる必要がありますが、これらと一緒に脂質を摂取することで、糖を体内に取り込む働きをする消化管ホルモン(インスリンやGIP)の分泌が増強され、筋グリコーゲンの回復が促進されることが報告されています(2)。実際に稲井らは、運動後のマウスに対して脂質を含む牛乳と糖質を一緒に投与した場合に、糖質のみを投与した時と比べて筋グリコーゲンの回復が促進されたことを報告しています(3)。

食事での活用法

このように、「脂質は摂取しないほうがいい」と避けられがちな栄養素ですが、摂取方法などを工夫することで、摂取しないよりもメリットを得られる可能性があります。
最近、「魚にはDHAが含まれていて体にいい」と聞いたことはないでしょうか。このDHAはドコサヘキサエン酸という脂質を構成する脂肪酸であり、これは、中性脂肪を低下させる働きがあるといわれています(4)。また、魚の摂取量を増加させることで、心疾患のリスクを低下させるということも報告されています(5)。

他にも脂質には様々な種類があり、それぞれにメリット・デメリットがありますので、上手に活用し、普段の食事からパフォーマンスを高める手助けをしてみてはいかがでしょうか。

参考文献

1.Mizushige T, et al. J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2007;53:1-4.
2.寺田新. デサントスポーツ科学. 2015;36:61-67.
3.稲井ら. 日本スポーツ栄養研究誌. 2017;10:38-47.
4.Iso H, et al. Circulation. 2006;113:195-202.
5.江崎治. 日本栄養・食糧学会誌. 2006;59:323-329.