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皆さんは、運動やトレーニング後にどのような食事を摂っていますか?
運動後は、運動中に使われたエネルギーを補う必要がありますが、運動の効果をより高めるためには、「何を」「どれだけ」「どのタイミング」ということを考慮して食事・栄養を摂ることが重要です。
本コラムでは、「何を」に焦点を当てて必要な栄養素について解説していきます。
運動・トレーニングによって失われるエネルギー
運動中は、骨格筋(筋肉)に貯蔵されている筋グリコーゲンと脂肪が主なエネルギーとして利用されます。高強度な運動であればあるほど筋グリコーゲンがエネルギーとして利用されますが、骨格筋内に貯蔵されている筋グリコーゲンは脂肪に比べて貯蔵量が少なく、枯渇すると筋肉の収縮が困難になります。そして、筋グリコーゲンが減少した状態のまま次の運動を行うと、骨格筋のタンパク質が分解されることで得られる、アミノ酸がエネルギーとして利用され、身体づくりの面から、マイナスとなってしまいます。そのため、運動後には筋グリコーゲンを回復させる必要があります。
では、筋グリコーゲンを回復させるためにはどのような食事をすれば良いのでしょうか。
筋グリコーゲンの回復
筋グリコーゲンを回復させるためには、まずその原料となる、糖質を摂取する必要があります。糖質の摂取量については、Jentiensらによると糖質の摂取量が1時間あたり1.0-1.2 g/kg程度で筋グリコーゲンの回復率が最大となり、それ以上摂取した場合でもさらなる効果は得られないことが報告されています(1)。しかし、この量の糖質を摂取するとなると、たとえば体重60 kgの人が60-72 gの糖質を毎時間摂取する必要があり、これは、ご飯の普通盛りよりやや多い量を毎時間摂取する量に相当するため、容易と感じる人は少ないと思います。
糖質とタンパク質を同時に摂取?
そこで、近年は、糖質の摂取量を減らし、タンパク質と一緒に摂取することで筋グリコーゲンを回復させる方法が推奨されています。van Loonらは、糖質0.8 g/kg/時とタンパク質0.4 g/kg/時を同時に摂取することで、糖質1.2 g/kg/時を摂取した時と同等の筋グリコーゲンが回復されることを報告しています(2)。さらに、糖質のみ摂取と比較して、糖質とタンパク質を同時に摂取する方が、筋グリコーゲンの回復が促進される、との報告もあります。
これらのことから、運動後に筋グリコーゲンを回復させるための食事として、糖質だけでなく、タンパク質も一緒に摂取することが推奨されます。
なぜ、タンパク質が必要なのか?
グリコーゲン回復には、「インスリン」という血液中の糖を取り込むホルモンが大きく関係しています。
インスリンは、糖質を摂取して血糖値が上昇した際に、すい臓から分泌されることによって血糖を取り込む働きを持っています。Zawadzkiらは、糖質、タンパク質をそれぞれ単独で摂取した場合や、それぞれの値を足し合わせた値よりも、糖質とタンパク質を同時に摂取した場合のインスリン濃度の方が高くなることを報告しています(3)。つまり、糖質とタンパク質を同時に摂取することによって、インスリン分泌が増強され、筋グリコーゲンの回復が促進されるといわれています。
運動・トレーニング後に摂取する食事の内容を振り返ってみて、効率的な身体づくりを目指しましょう。
参考文献
1.Jentiens R, Jeukendrup AE. Sports Med. 2003;33:117-144.
2.van Loon LJC, et al. Am J Clin Nutr. 2000;72:106-111.
3.Zawadzki KM, et al. J Appl Physiol. 1992;72:1854-1859.