どのように運動生理学を指導に活かせるのか?スポーツ健康科学博士がわかりやすく解説!

運動生理学は、スポーツ指導において役立つことはわかるけど、具体的にどんな活かし方があるの?と疑問に思う方は多いでしょう。そこで本記事では競技特性に合わせた運動生理学の知見を活かすトレーニング方法について紹介します。

競技特性によって求められる能力が異なる

本日は「競技特性に見合ったトレーニング方法を導入する必要がある」というお話をします。というのも、スポーツ競技は大きく分けて有酸素・無酸素・混合の種目に分類されることはご存知でしょうか?例えば、陸上競技の長距離のように、おおよそ一定の速度で長時間走り続ける種目の場合、有酸素性のエネルギー供給が大きく貢献します。

一方で、100m走のような短距離種目においては無酸素性エネルギー供給の貢献度が高くなります。また、バスケットボールやサッカーのように、ダッシュとジョギングを繰り返すような競技は、有酸素性と無酸素性のどちらの能力も高める必要があります。このように、競技によって求められるエネルギー供給系が異なるので、競技特性に見合ったトレーニング方法を導入する必要があります。

競技別|運動生理学を活かしたトレーニング方法

ここでは、運動生理学を活かしたトレーニング方法について、競技種目を例に挙げながら、解説します。ここでは代表的なトレーニング方法を示しますが、もちろん、トレーニング内容はこれだけではありませんし、他の種目にも応用できます!ご自身が関わっている種目への応用を考えながら読み進めてみてください!

陸上競技

陸上競技には大きく分けると、無酸素性と有酸素性があります。下記では2つのトレーニング方法について解説します。

無酸素性_短距離

陸上競技の短距離種目のパフォーマンス向上を狙うアプローチは多々あります。ここでは、エネルギー供給に着目します。短距離走は100m〜400m(おおよそ10秒から60秒)をいかに速く走るのかが重要です。特に400mでは最後には足が動かなくなり、ゴール後にお尻が痛くな流ことがあります。

ちなみにこの時「乳酸が溜まっている」「乳酸漬け」という言葉が多用されていますが、乳酸=疲労物質ではないということはご存知でしょうか?近年の研究で明らかとなってきています!

さて、ここで紹介するのは最近着目されているトレーニングが高強度インターバルトレーニングです!文字通り「高強度」の運動を「インターバル」つまり休憩を挟みながら実施するトレーニング方法です。運動と休憩時間のバリエーションは豊富にあります。

例えば、5秒間全力で自転車ペダリングし、10秒間の休憩を挟んでまた5秒間全力自転車ペダリングをする。5秒間の自転車ペダリングをを10回繰り返すことで疲労困憊になり、無酸素性能力の向上が期待できます。

有酸素性_長距離

長距離選手は、長時間走っているイメージありませんか?実はそれこそが有酸素性能力を高めるためのトレーニングなのです。ポイントは「低・中強度」の運動を「長時間」実施することです。休息を挟むことなく、呼吸が乱れ始める程度の速さで継続的に長時間運動し続けることで、有酸素性能力が高まります。

サッカー/バスケットボール/バレーボール

陸上競技の短距離(無酸素性)と長距離(有酸素性)の他にも、サッカーやバスケットボール、バレーボールといった、混合系に分類される種目があります。ここでは、高強度インターバル系の運動生理学を活かしたトレーニング方法について紹介します。

混合性

皆様も最近耳にしたことがある「タバタ式トレーニング」についてお話をしましょう。現在立命館大学で活動されている田畑泉教授が、鹿屋体育大学(鹿児島県)に所属している際に発表した論文が基となっています。簡単に説明すると20秒間の自転車ペダリングと10秒間の休息(これを1セットとする)を8セット繰り返すといった運動内容です。

ここでポイントとなるのが”運動強度”です。最大酸素摂取量(その人が酸素を体内に取り込める最大量)が観察された運動強度を100%とし、その170%の強度で20秒間の運動を実施することがポイントです。この運動強度で8セットをやり切るのは非常に苦しくきついトレーニング内容になっています(しばらく立てません 笑)。

ただ、厳密にこの運動強度を設定するためには最大酸素摂取量を算出する必要があるため、工夫が必要となります。詳細はまたの機会にお話ししますね。スポーツ現場において、”20秒-10秒”だけが一人歩きしている現状を問題視する研究者がいることも確かです。正しい情報収集を心がけましょう。

競技別に求められる能力に着目してトレーニングをしよう

これまで述べてきたように、競技によってエネルギー供給系の貢献度が異なります。有酸素・無酸素・混合と大きく分類してみて、それぞれの能力向上を目指したトレーニングを組み立てるようにしましょう!もちろん短距離選手は無酸素性だけに着目すれば良いということではなく、多面的なトレーニング計画が重要です。そもそもエネルギー供給って何?という方もいらっしゃるかもしれませんが、今後の記事で詳しく解説しますので、SNSのフォローをよろしくお願いします。

Action Plan

  • 経験したことがあるスポーツが、有酸素・無酸素・混合のどれに当てはまるか考えてみよう
  • 競技特性に着目しトレーニング方法を探してみよう

わかりやすく「運動生理学とは?」についてスポーツ健康科学の博士が詳しく解説!

スポーツサイエンティストとしての選手に正しい努力をしてもらえる楽しさ~谷口耕輔さん~