インタビュー

個人にカスタマイズしたインソール作りへの想い~飯田潔さん~

スポーツシューズの中敷き、インソール。スポーツには様々な競技と、アスリートがみえますが、そのシューズにはごく一般的なインソールを入れるだけでは解決できない、細かな足の悩みがあります。飯田潔さんは選手の目的ために問題に向き合いながら、ベストなインソールを作り解決していきます。スポーツ選手の足元から守り、支えているBack athlete、飯田さんにインタビューをします。

インソールに興味を持ったきっかけ

―――最初に、飯田さんがインソールに着目して、職業にされた経緯をお聞きしたいです。

インソールの制作は、携わって25年になります。大学生の時にスキーをやっていまして、卒業後もお世話になったスポーツ用品の輸入商社、三井物産スポーツの宣伝販促の部署に就職しました。仕事内容は、地方で活躍している選手のサポートや、自社製品を使ってもらえるよう、スキー選手のスカウトです。

有名選手に商品を使ってもらうことで広告として販売促進をしていました。扱っているものにはスキー商品の他に、インソールがありました。フランスから輸入した、SIDAS(シダス)というインソールで、僕はその商品を担当していました。当時のスキーブーツは今と違って、選手の足に合わないケースが多く、それを合うように加工し、調整することも一つの仕事でした。

足の形がひどい選手は靴がずっと当たって痛くて履けないくらいでしたが、インソールをきちんと作ってあげれば、改善されます。そこで足の形が変わってブーツの中に綺麗な形で入るということに気づき、次第にインソールにのめり込んでいきました。“研究した”というより、当時は会社の予算を使って勉強させていただいたという感じです。そこから始まっています。

三井物産スポーツで学んだ後、ストレングスコーチの資格も取りました。アスレチックトレーナーというよりは、どっちかというとストレングスコーチの毛色が強いような感じで、フィジカルの方を見させてもらっています。

インソールの専門家としての業務内容

―――色々な分野を担当されていると思いますが、飯田さんの業務形態を教えてください。

現在、メインでやっている仕事は港区南青山で「インソール専門店 フットトレーナーズ」を営業しています。完全予約制で、ご来店いただきインソールを作成しています。お客様は、スポーツ選手や一般の方もいらっしゃいます。

スポーツ選手のお客様は、バドミントンやラグビー、自転車競技、フィギュアスケートなど、様々な分野の方が来られていて、一般の方はランニングやウォーキングをされている方、あとは姿勢とか脚の形が気になる方など、そういう方を対象にインストールを作成しています。

インソールを作りにみえたお客様に、最初にアライメントチェックを行っています。様々な体の問題がありますが、アライメントトレーニングという、アライメントを改善するための施術やフォーム改善のための運動指導もしています。あとは遠征中の選手や、遠方の選手・お客様へリモートでオーダーメイドインソールの作成、インソールアカデミーと言って、インソールをこれから作っていく方へ向けての講習も行っています。

 

―――スポーツインソールについて、現状の広がりはどのように考えられていますか。

元々、スポーツインソールはスキーから始まっているところがあります。スキー用のインソールは動きのあるシューズのインソールよりはある意味簡単でした。スキーブームの時はスキー屋さんがインソールを作っていたケースも多く、インソールを販売してもらうためのセミナーもたくさんあって、インソールを作る人を育てる環境がありましたが、スキーブームが去ったいまは、そういったものが少なくなってきました。

現在は、どちらかというとカスタムメイドのインソールよりも、「つるし」で買える、成形済みで入れるだけのインソールで薄利多売を目指すような業界になっています。様々な競合他社が売っているインソールは2、3千円のものから、ワンペアで20万円とかするものまで幅広くあります。しかし、スポーツをする方の“体を見て作る”ことをやっているところは非常に少ないと思っています。

きちんと体の仕組みをわかって作る効果は、つるしのインソールだとか、ただ踏んで形を作るだけのインソールよりも比べ物にならない程の効果が出ると思います。それでも、日本は昔からインソールがあるのに、スポーツをしている誰もがインソールを入れているわけでもなく、流行ってもいるわけではない。そういう意味では、まだまだ発展途上なのかなと思います。

 

日本におけるインソールの現状

 

―――飯田さんの観点から見て、日本のインソールの現状は海外と比べるとどのように感じますか。

海外に行ってインソールを作ったりしたことがありますが、インソールの先進国、北米はスポーツの教育水準が高いと思います。ある程度のベースとなる教育やスポーツ医学みたいなものが浸透している国の方がインソールを使う意味を理解しています。

北米の場合、保険の問題や足病医(そくびょうい)という足専門の医師が職業であり、足にトラブルがあると手術や、インソールまで作るサポートがあります。ヨーロッパの方に行くと医者はそこまではやりませんが、ドイツでいう「オーソペディシューテクニック(整形外科的靴技術)」ですとか、シューズ関係のインソールを作る専門職みたいなものが存在していますし、フランスにも「ペディキュール・ポドローグ(足病療法士)」があるなかで、日本ではそういう職業が一切ないという状態です。

ただ言えることは、どの国のどの分野もトップが医者に準ずるような医学に近いものになっているということです。私はインソールというのは、どちらかというとスポーツ科学からくるべきものではないかと考えています。

なぜかというと、医者が作るインソールはなにか症状が出ていたり、痛みが出ていたりした時に治すためのものであって、どちらかというと「固定」と「保存」を目的としていることが多いのですが、我々が作っているインソールというのは、固定とか保存とか症状を良くするためだけではなく、動きを少し変えてあげることによって、悪い動きを正してあげるというところから運動連鎖に繋げていくもので、医療的なものとはジャンルが違うと思っています。

海外ではそんな形で、インソールといえば医者になってしまっているところはありますが、日本は逆にそういったことがまだはっきりとはないので、スポーツインソールという業界では開拓していくチャンスではあるのかなという風には思っています。

インソールの専門家としての想い

―――仕事をするうえで大切にされている所や、留意している部分を教えてください。

飯田 大切にしているところは、常に作られる方の「目的」を明らかにして、その目的に向かって作るということを絶対に忘れないことです。手を抜かず、丁寧に。私が何をしてあげられるかを考えてベストを尽くしています。その結果、インソールやアライメントの改善トレーニングも、目的に対して想像した通りになると非常に楽しいです。そういうところに醍醐味を感じています。

インソールを使うことで色々な事が治るということは勿論あります。ですが留意している部分として、一般の方のインソールを作る時「こういう痛みがあるのでこれを治してほしい」みたいな目的で来られる方がいらっしゃるので、そこは「インソールだけでは治せません」ということをよく説明しています。

インソールも必要ですが、こういうトレーニングや、ストレッチだとか身体のケアをやっていかないと、この痛みやこの症状は治っていかないですよというように、必ずインソールを作成する時に、その方にとって優先順位の高いアラインメント改善のためのセルフケアなどを必ずレクチャーし、それを続けてくださいと説明しています。

―――アスリートといっても、個人差や競技ならではの特性がありますが、インソールを作成される時はどういったことを大事にされていますか。

その競技の動きを見て、エラーが起こらないように作るという所がポイントになってきます。そのため必ず、来店された選手が競技をしている時の運動解析や画像解析をしています。例えばボクシングであれば、実際に動いてもらってその足元を見させてもらっています。

他の種目でも同様に、どういう足の使い方をするのか、どれが理想の動きで、どういう動きが出てはいけないのか、出したくないのかを聞き取って作るようにします。フィギュアスケートの場合は、画像解析をして動きを見て、ジャンプの時にエラーが起きないようにとか、そういったことを見るようにしています。

競技によりますが、インソールを使うことでパフォーマンスが上がりやすいスポーツもあります。それは、長時間使って苦しいスポーツで、例えば長距離を走るマラソンだとか靴との相性が悪いことによって起こる問題、そういうものが多いスポーツや足元からのパワーをしっかり伝えていくような種目です。

ウインタースポーツも差が出やすいと思います。固いブーツの中に足を入れてたくさん動かないといけないスポーツ、つまりスキーやフィギュアスケートなどもそうです。靴の外側がすごく硬いので、いい状態で足が靴の中に入らないと運動した時に、当たって痛みが出て運動制限が掛かってしまうことがあるので、用具としてスキー靴を正しく使うためにはどうしたらいいか考えた時に、インソールの役割がすごく重要になってきます。

これまでの活動における最高の経験

―――この業界での最高の経験や興奮したことなど、エピソードを教えていただきたいです。

動きが良くなって成績が出たとかそういった感じのところです。日本の女子フリースタイルスキー・モーグル元選手の上村愛子さんは、それまで外反母趾が結構ひどくて、足が痛くて試合を休むようなことも時々ありました。ですが、インソールをしっかり作ってからは外反母趾の痛みもほとんどなくなり、彼女がワールドカップで総合優勝をした時は非常に嬉しかった覚えがあります。やっぱり試合に出場を続けないと取れないものでもありましたし、シーズン中に足が痛くなるということはその間はなかったかなと思います。有名無名関わらず、全てのアスリートがそれぞれの目的に向かっていらっしゃいます。球技の選手でも怪我をして、怪我から復帰した選手がみえましたが、見ていて感慨深いものがありました。ダイレクトに足の裏を痛め、そこからインソールを入れたことで復活された思い出深い選手も何人もいます。

―――インソールの使用率というところで、トップアスリートもいらっしゃると思いますが、ジュニアやユースのカテゴリーの方はいかがでしょうか。

親御さんが気にされている選手というのは作りに来られるケースが多いですが、大学生ぐらいになって親御さんのサポートもなくなり、自分でスポーツにお金を出さなくてはいけないようなアスリートは、なかなか金銭的に目が向かないところはあるかなと思います。足元が整う効果はすごくあると思いますが、やはりそれを選手だけではなく、コーチですとか、医科学スタッフももう少し目を向けていただいて、こういうものがちゃんと効果があるということを伝えて欲しいです。ジュニアの選手や発展途上の選手が使うことでパフォーマンスが上がったり、怪我の予防になりますし、選手生命が延びたり競技パフォーマンスのピークが長くなったりすることができると思います。これを広めていくのは我々の仕事でもありますが、もっと当たり前のようにインソールや靴選びだとかそういったものがスタンダードになっていけばいいなと思います。

あと、コーチをはじめ、色々なスタッフの方が自分の仕事の範囲だけでなんとかしようとしている方が多いと思います。ある意味マルチタスクな人が求められるような状態で、専門的な仕事であっても自分の専門外の仕事をみなさんやられているように感じます。また、チームという単位で考えると、連盟というような組織がある中で、監督が変わると全部のスタッフも変わり、また0からスタートするみたいなところがあり、今までしてきた事業が継承されていない。それが継承されていけば、これまで積みあがってきたものがどんどん次に繋がって結びついていくのではないかと思っています。

 

今後の活動への想い

―――今後、どういったビジョンを考え、挑戦して広げていきたいですか。

現在、力を入れているのはインソールアカデミーです。身体のことをきちんと理解した上でインソールを作っていくというメソッドを広めていくためのスクールをやっていきながら、選手の対応をしっかりしていきたいなと思っています。

これまでを考えると、十数年間は事業を軌道にのせるという意味で店舗を拡張して人を育て、物販もたくさんしていましたが、現場に寄り添う仕事は利益を追求する形になると、なかなか難しいところがありました。いまは自分一人で出来るような形にまとめあげています。選手のサポートについては自分の好きな事の延長でやっているところが正直なところです。そのため、今後はインソールアカデミーのスクール事業をしっかりビジネスとして行い、BtoBで仕事をさせていただき、治療院への導入や独立・起業をする方に向けて指導していきたいと思います。生徒を増やしていくことは、インソールの普及にも繋がってくると思います。こちらの方本業にしていけるような形に変えていきたいなという風に考えています。

また、先程もお話しした通り、医療インソールとは競合ではない、スポーツインソールを広めるために、スポーツで使って役に立ってきたものが一般の方の健康にも役に立つところをより広めるようにしていけたらいいなと思っています。

 

プロフィール

飯田 潔(いいだ・きよし)

フットトレーナーズ代表取締役

姿勢・動き・競技中の動作解析などからカラダの動きや姿勢の問題点を抽出しケガ予防・コンデショニング・パフォーマンスアップなど問題解決に向けて、総合的な コンサルテーションを行うスペシャリスト。

専門分野:アライメントトレーニング指導・インソール・シューズ全般

経歴

JOC (財)日本オリンピック委員会 強化コーチングスタッフ(2002~2011)

(財)全日本スキー連盟モーグルチームテクニカルスタッフ(2001~2011)

2002ソルトレイクシティオリンピック・2006トリノオリンピック・ 2010バンクーバーオリンピックに全日本スキーチームテクニカルスタッフとして帯同

NSCA認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト(CSCS)2004~2015

山形県スポーツタレント発掘事業YAMAGATAドリームキッズ講師(2008~)

JAFT(現、一般社団法人日本フットウェア技術協会)初代理事長、スポーツシューフィッター制度創始者

日本障害者スキー連盟 IDアルペン コーチ兼トレーナー(2018~2020)

中央大学保健体育研究所 客員研究員(2019~)

-インタビュー

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