Withコロナの限られた練習時間で集中した練習をするために

皆さんは、コロナの状況の中で集中して練習ができていますか?緊急事態宣言が解除されてから、早1ヶ月が経過しました。スポーツ現場においてもプロ野球、プロゴルフ、Jリーグの開幕、さらには部活動の再開と少しずつ動きが出てきたように感じます。

しかしながら、練習時間をはじめとした活動には制限があり、さらに日々、様々な情報が耳に入ってきて不安を抱えながら練習をしている人も多いのではないでしょうか?今回はこのようなWithコロナの時期だからこそ、限られた時間の中で集中して練習するための方法について考えていきたいと思います。

集中力を高めるためには?

集中して練習をするにも集中力とは何か?を知らないと始まりませんね。

専門語用語で言うと、集中力とは注意集中と言います。つまり、何か1つの物事に注意(意識)を向けるということになります。野球のバッターを例に出せば、バッターが集中すべきことはピッチャーもしくはピッチャーが投げるボールに集中することが大切です。しかし、いざ打席に入ると「集中できない!」なんてことはよくあることだと思います。そこには集中を邪魔する要因が必ずあります。例えば、「この打席で打たないと監督に怒られる!」、「雨が降っていて、バットが滑る」などが考えられます。でも、本来は目の前のボールに集中しなければ打つことはできません。どうすればいいのでしょうか?

集中力を高める方法①集中を邪魔する要因を分析する

ここで、重要になってくるのが「集中を邪魔する要因を知ること」です。皆さんは何に集中を邪魔されますか?集中を邪魔する要因は、4つあると言われています(Weinberg, 1992)。

  1. 周囲の余計なこと(ヤジ・歓声など)
  2. すでに終わった過去の出来事(ミス)
  3. まだ起こっていない未来の出来事(不安)
  4. 分析麻痺(考えすぎる)

この中で皆さんの特に集中を邪魔する要因をまず知ることが重要になります。そして、その次のステップとして重要なことが「コントロールできることだけを考える」ことです。皆さんの集中を邪魔していた要因は、自分でコントロールしようと思えばコントロールできますか?まずはコントロールできることとできないことを選別することがポイントになります。

集中力を高める方法②

実は、アスリートにとってコントロールできるのは「自分自身」のみです。ほとんどのものはコントロールすることが難しいのです。しかし、アスリートは自分自身がコントロールできないことによって集中できない状態に陥りやすいわけなのです。そのため、まずはコントロールできること(今やるべきこと)に集中するという意識づけがとても重要になります。

集中を高める方法③

しかし、上記のように自分自身に集中しようと思っても、ミスが出たりすれば集中が切れてしまうことはよくあることです。その場合、集中力を高める・切り替えるためのテクニックを活用することがとても重要になります。つまり、一旦プレーへの集中を外し、別のテクニックに集中し、再びやるべきことに集中できるかどうかが鍵になります。下記に、2つの集中を高めるためのテクニックをご紹介します。

集中力を高める呼吸法

メンタルトレーニングでも呼吸法は、ポピュラーなテクニックの1つです。呼吸に集中することに心をリセットします。
<呼吸法のテクニック(Gotter , 2018)>
 1.ふぅーという音を出しながら口から息を全て吐きます。
 2.次に口を閉じて、頭の中で4カウントしながら鼻から吸います。
 3.7秒間息を止めます。
 4.口から8秒で吐きます。

緊張したり、イライラしている時は呼吸が早まり、心拍数も増加しています。そのため、呼吸法のテクニックを活用することによって、呼吸が整い、ストレスの軽減や集中力が高まると言われています。特に、呼吸法を活用する上で重要なのはそのために「間」を見つることです。これは、アスリートに限らず、仕事をする上でも必ず休み時間はあります。その休み時間をいかに活用するかが大切になってきます。

②セルフトーク(Van Raatle, Vincent, & Brewer, 2016)

セルフトークとは、簡単に言うと独り言・心で声です。皆さんが、つまらない授業に参加していたとしましょう。口には出しませんが、「早く終わらないかなー」、「帰りてー」なんて心で呟いた経験があると思いますが、それがまさにセルフトークです。このセルフトークに集中することで、集中力を高めることができます。
効果的なセルフトークとして2つの種類があります。

・ポジティブなセルフトーク(動機づけセルフトーク)
 例)「俺ならできる」「俺って最高!」など
・教示セルフトーク(パフォーマンスの課題や技術的にきっかけとなるセルフトーク)
 例)「ボールをよく見よう!」、「リラックス!」

このようなセルフトークをあらかじめ決めておき、セルフトークに集中することで集中力が高まります。

まとめ

今回は、Withコロナの時期だからこそ、練習の質を高めるために集中力の観点から考えました。


1.集中力を邪魔する要因を明確にする
2.コントロールできることのみを考える
3.呼吸法やセルフトークを用いて集中力を高める


最後に、Withコロナの時期で多くの情報が流れてきていると思いますが、この情報を気にしすぎて集中が散漫になってしまうことがあると思います。もちろん、情報収集は非常に重要ですが、頭の中がその情報で溢れかえってしまっては、練習の質や仕事効率は下がってしまいます。上述した通り、自分がコントロールできることは限られていますので、練習ができるようになった今、自分自身の集中力を高めて練習の質を高めることが必要になってきます。メンタルトレーニングは、一夜で身につくものではありませんが、トレーニングすることで必ず皆さんの練習の質が高まる時が来ると思います。是非、今回ご紹介したテクニックを活用して限られた時間の貴重な練習時間の質を高めてみてください。

引用・参考文献

Van Raalte, J.L., Vincent, A., Brewer, B.W. (2015), Self-Talk: Review and Sport- Specific Model, Psychology of Sport & Exercise, 22, 139-148.
Warren A. Weinberg & Roger A. Brumback(1992), The Myth of Attention Deficit- Hyperactivity Disorder: Symptoms Resulting from Multiple Causes, Journal of Child Neurology, 7 issue: 4, page(s): 431-445.
Gotter (2018), What Is the 4-7-8 Breathing Technique?, https://www.healthline.com/health/4-7-8-breathing?fbclid=IwAR13FAYa01zp4C1EYoowNwVLOX9LbRXT62vzQlyEvwJmkGs4N8W7BxKc4p8#1

名前小林 玄樹
資格等修士(体育学) 日本スポーツ心理学会認定:スポーツメンタルトレーニング指導士
ご所属株式会社ハイクラス/京都工芸繊維大学大学院博士後期課程
メールアドレスg.kobayashi@highclass-inc.com
プロフィール日本スポーツ心理学会認定:スポーツメンタルトレーニング指導士。株式会社ハイクラススポーツ活動支援事業責任者。

高校時代、野球部に所属し、東海大学体育学部・高妻容一教授の講演・指導を受けてメンタルトレーニングを実践した。その時にメンタルトレーニングの効果を体感し、同教授の元で大学・大学院の6年間を通してスポーツ心理学・応用スポーツ心理学(メンタルトレーニング)の研究、実践活動を行った。

現在は、メンタルトレーニングを様々なチームや選手をはじめ、指導者、保護者、ビジネスパーソンに対して指導するメンタルトレーニングのスペシャリスト。テンポの良い講演と親身な相談には定評があり、長期間サポートを続けている選手も多い。

所属学会として、国際応用スポーツ心理学会/日本スポーツ心理学会/日本スポーツメンタルトレーニング指導士会/日本パフォーマンス学会/日本体育学会がある。